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F.L……#1《MIDNIGHT PHONE CALL 》
「ご苦労だったわね。休んでちょうだい」
目の前の女性……母親であり上司のエザリア・ジュールは言った。髪と瞳の色は母譲りなのだと、つくづく思い知らされる。
三ヵ月越しの「依頼」が終わり、内心ほっとした。それが俺にとっては当たり前のことだったのかもしれなかった。
俺はこの時知らなかった。
………悪いことには鼻が利くつもりでいたんだ。
だが災厄は確実に俺を捉えていた。
―Flagile Lovers―
依頼が終わって社を後にした俺はハイウェイにのり、愛車「フェラーリF50」をとばし家路に急いでいた。
――そんな時だ。
『プルルル。プルルルルル』
突然車内電話が鳴った。
鳴る理由なんてそう思いつかない。
――仕事が終わったときぐらい電話の電源も切りたいものだ💨
……そんなことを頭に浮かべながら電話に出る。
「はい。イザークですが」
電話の主は予想どおりだった。
『エザリアよ。家に帰ると中だったかしら?仕事が終わった後に悪いんだけど、またオファーが入ったの。
……他に回したほうが良いかしら?』
この時期大口の仕事は入らない……どうせ軽い仕事だろ。
「引き受けますよ母上」
これといって予定もないしな
『わかったわ。相手方に返事はしておくけど、今日はもう遅いから、明日オフィスに来てね』
そういうと、運転中の俺を気遣ってか早々に電話を切った。
「お次は何が来るやら」
苦笑いしながら、アクセルを踏み付けた。
家に帰った俺は、直ぐにスーツを脱ぎ腰に付けていたホルスターを外した。
そう。
表向きは税理士の仕事をやっているが、その正体は民間護衛派遣会社……PMCの様なものだった。
警護官のバッヂとM9をライトスタンドに置き、ベッドに倒れこんだ。
連日の疲れからか、明日から始まる"悪夢"など知る由もなく俺は深い眠りについた……
#2に続く
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