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約束の時間。
言われた場所に行ってみると、男は既に来ていた。
「良く逃げなかったな。そこは褒めてやろう。」
「(何だってこう、上から口調なんだ?;)」
正直この男の性格に呆れていた俺は、とにかく早く終わらせようと急かした。
「そんなことはどうでもいいから、早くルールについて話せよ。」
「今から話すとこだったんだよ!…まぁ、ルールは至って簡単。この丘の山奥にいる、狂暴妖怪を倒した方が勝ちだ!」
「狂暴妖怪?」
「何だ?怖じ気づいたか?制限時間は日が沈むまで。敗者は勝者の下僕になること。わかったか?」
「下僕って…俺、お前のこと下僕にしたくもないし、下僕にもなりたくないんだけど…;」
「お前の意見なんて聞いてねぇんだよ!おら、始めるぞ!」
何て自分勝手な奴なんだ。と内心ツッコミつつも、ここまできたらやるっきゃない。
「それでは位置について~…よーい、スタート!」
男の下っ端の一人が旗を振り上げ、二人は一斉に走り出した。
男はどんどん奥へと潜り込んで行き、俺も負けじと進んだ。
そして、もうすぐ完全に日が沈みそうになった時だった。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」
「!?今の声は!;」
俺は声のした方へ、全速力で駆けつけた。
「デカ過ぎんだろ…これ;」
そこにいたのは、8m以上はありそうな女郎蜘蛛の妖怪だった。
「くっそお…;行け!アイツを倒すんだ!」
「やめろっ!;」
男は問答無用に自分の妖怪を、巨大女郎蜘蛛に突進させた。
すると、その妖怪は飛び込んで来た鵺を糸で巻き付け、口の中へと運んでいった。
次第にバキバキムシャムシャという音が聞こえる…
「っ…;アイツ…妖怪を食べやがった…!;」
「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!;」
男は恐怖のあまり、女郎蜘蛛に背を向け逃げ出した。
「あの馬鹿!妖怪に恐れを見せたらお終いだぞ!;」
俺は服の中からお経を取り出し、数珠を使って唱えた。
「我が魂に呼応し我が望みに従いたまへ!」
すると、数珠が大きくなり、女郎蜘蛛の体に巻き付き動きを封じた。
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