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「呼び捨てにして悪いな」
「いえ……」
「でもな、俺は今の由佳は好きじゃない。仕事中の友達のことも、それから、麻里さんのことも思いやれよ。今の嫌なおまえは本当のおまえなのか?」
「……い、いえ」
由佳は戸惑った顔のままクビを左右に振った。
「だろ?もっと誰にでも優しい余裕のある大人の女性になれよ。おまえならできると思うぞ」
俺は少し優しい表情で言った。
「は、はい!」
なんか、彼女の表情がぽや~んとしたのは気になったが、言う時に言っとかないと……と思った。
「俺も仕事があるんだ。今日はもう帰れ」
「はい、わかりました。麻里、帰ろ」
「あ、は、はい……」
その初めてというような柔らかい言い方に麻里さんが戸惑っているのがわかった。
由佳は、外に出ると両手を揃えて、ぺこりと頭を下げた。
そして、上げた顔のその表情に、俺は、してしまった「失敗」に気が付いた。
麻里さんも慌てて頭を下げて追いかけていった。
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