第3章 花屋に集う人々

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「で?由佳さんがおしとやかになって、何か不都合があるのか?」 俺は、出来上がったポークピカタを沙音梨たちの前に置きながら言った。 それを見た太一とヒロシがサラダとスープを出すのを手伝ってくれた。 「あ、いえ……ただ、驚いたって言うか……いや、そうっすね。アニキのおかげですよ。あれが続けば感謝します」 確かに、本来の自分を押し殺していつまで続くことやら。 「うちの親父も、アニキに一度お会いしたいって言ってました」 「へえ……町長が?」 目立ちたくはないが、それも悪くない。 こんな田舎町で、町長に顔つなぎができていれば、なにかと便利かもしれない。 「でも、会いにはいけないぞ」 俺は小声で鉄也に言った。 「あ、そうですね。沙音梨ちゃんの傍を離れられないですもんね……」 鉄也も小声で言うと、俺はうなずいた。 「わかりました。親父をこっちに連れてきますよ」 「ああ、そうしてくれると助かる」 二人でちょっと悪巧みしてる感じだが、沙音梨と美里さんは、二人できゃっきゃ、きゃっきゃと食事に夢中で気付いていないようだった。  
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