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「じゃあ、乾杯かな?」
そんな雰囲気を見ていた美里さんが、麻里さんの飲み物を用意し始めた。
「あ、私、車なんで……」
「大丈夫、ノンアルコールのカクテル作ってあげるから」
美里さんはウィンクした。
「はい、シンデレラ」
美里さんが麻里さんの前に置いたのは、マティーニグラスに入れたオレンジ色のカクテルだった。
「うわあ、きれい」
「オレンジ、レモン、パイナップルジュースをシェイクしたものよ」
彼女は、心からわくわくした感じでそっと口をつけた。
「美味しい♪」
麻里さんはそう言って笑った。
最初来た時のおどおどした雰囲気がまるで感じられなかった。
それを見て沙音梨も微笑んだように見えた。
俺も、そんな雰囲気に気持ち良さを感じていた。
「美里さん、俺も何かこの雰囲気に合うヤツをもらえる?」
「うん♪」
美里さんも嬉しそうに棚からお酒をいくつか選んだ。
「カクテルっていいね」
「でしょ?」
気が付けば、沙音梨と麻里さんが楽しそうにおしゃべりしていた。
俺は自分が人の役に立ったというか、一人守った気がして嬉しかった。
「本当に、いいもんだ」
そして、俺の前にまたカクテルが置かれた。
「クォーター・デック。ラムベースね」
「サンキュ」
俺はグラスを掲げた。
こうして初春の夜もふけた。
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