第4章 春の真ん中のおと

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それからも特に何も起こらず、まだ3月半ばだというのに、この海辺も春真っ盛りの雰囲気になった。 太平洋側の海辺だからだろうか。 いや、海辺もというのは正確ではないかもしれない。 浜辺ではそれほど季節感を感じるモノがあるわけではない。 俺が花屋で働いているからこそ、余計に季節を感じるのかもしれない。 一度感じた季節感が、見るモノ全てをその季節に見せる。 俺は、ちょっと霞んだ感じの空と海を見つめながら、砂浜の草地に座っていた。 ここだと、店まですぐ戻れるし、今は鉄也が店にいてくれている。 奴も、最近は嫌われるほどの嫌な雰囲気がなくなって、沙音梨たちもとやかく言わない。 俺は、鉄也に「店番してますから」と言われて、こうして少し沙音梨の傍を離れることも増えた。  
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