第1章 はじまりのおと

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「わかってる」 無線のスイッチを押して返答すると、俺はまた男に視線を向けた。 その時、人波が動いた。 多数の悲鳴とともに、人々があの男の側から離れようと逃げ出している。 「やっぱり何か持ってる!刃物だ!」 男はその場で刃物を振り回していた。 俺は走り出そうとしたが…… 『動くな!朝倉!』 班長の声に後ろを振り向いた。 班長が大臣の前に位置しながら、小走りにこっちへ来ているのが見えた。 「しかし、班長!」 『マルタイを守るのが最優先だ!すぐに出る』 俺は男の方を見た。 訳のわからないことを叫びながら刃物を振り回している。 大臣を守るっていっても、こっちには来そうにない。 人々は男から離れて、まだケガをした人はいないようだ。 取り押さえるなら今だが…… その時、一人の若い女性が、俺の左前方、男から20mくらい離れたところで転んだ。 刃物を振り回していた男がそれに気付いた。  
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