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「わかってる」
無線のスイッチを押して返答すると、俺はまた男に視線を向けた。
その時、人波が動いた。
多数の悲鳴とともに、人々があの男の側から離れようと逃げ出している。
「やっぱり何か持ってる!刃物だ!」
男はその場で刃物を振り回していた。
俺は走り出そうとしたが……
『動くな!朝倉!』
班長の声に後ろを振り向いた。
班長が大臣の前に位置しながら、小走りにこっちへ来ているのが見えた。
「しかし、班長!」
『マルタイを守るのが最優先だ!すぐに出る』
俺は男の方を見た。
訳のわからないことを叫びながら刃物を振り回している。
大臣を守るっていっても、こっちには来そうにない。
人々は男から離れて、まだケガをした人はいないようだ。
取り押さえるなら今だが……
その時、一人の若い女性が、俺の左前方、男から20mくらい離れたところで転んだ。
刃物を振り回していた男がそれに気付いた。
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