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心臓の鼓動がよく聞こえる気がする。
砂浜を踏みしめ、湖へとゆっくり向かう。
海のようだがさざ波の音はなく、静寂の中に砂浜を踏みしめる音が妙に頭に響く。
一つのやしの木に、いつだったか見かけたことのある琥珀色の虫が止まっていた。
…さすがに驚いた。
またあの落書きだ。
しかも、虫の背中に
"bath room"
と書かれている。
虫からしたら、ここはお風呂のようなものなのだろうか…
でもどうやって書いたんだろう。
そんなことをぼーっと考えていると、目の前に湖が迫ってきた。
「フユラ…
潜って、何かいいことある?」
ミリアンは不安に押し潰されそうになり、口を開いた。
「ここの湖はすごく広くて気持ちいいんだよぉー。
僕大好きなんだっ!」
嬉しそうに話すフユラを見て、少し安心する。
こんなに楽しそうなんだから、きっと心配することはないんだよね。
湖に潜っていくだけ。
ただ、潜る時に自分からではなく、湖から飲み込んでもらって潜ってくだけ…
ほら、自分から潜るよりラクだし。
…
ラッキー。
と心にも思っていないことを考えていると、急に回りが青い光に包まれた。
「にゃぁ。」
顔を上げるとさくらがこっちを細い目で見ている。
なんだよ。
やっぱり猫じゃん。
さくらの耳元の水中宝が小さく光を放っていた。
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