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ふっ、と目が覚めた。
またママの夢。
この国を治めていた、強くて、優しくて、いつもかっこよかったママ。
柔らかい茶色の髪の毛に、透き通るような突き刺すような青い目、そしていつも同じ香水をして…
それから…
…
「…」
夢の事を深く考え直すのもばからしい。
少し苛立ちを感じながらも、のそのそとベッドから起き上がった。
朝は苦手だ。
目を窓にやると、外は相変わらず丸い、ふわふわしたものが降っていた。
雪のような、綿のようなもの。
それは地面に落ちるたびに光を放ち、消えていく。
「ママ、私頑張ってるからね。心配しないでね。」
気だるい体を引きずるように、側にある椅子に座った。
ここはとても居心地がいい。
白い部屋、大きくて柔らかい雲のような白いベッド、白い小さな机に、フワフワな白いマット。
そこにはとても似合わない焦げ茶の硬い椅子。
その椅子は座るたびにぎしぎしと音をたてる。
けれどその音がとても心地よく、たまに自分が自分でないような、そんな不思議な気持ちになった。
「ミリアン・カーネリア女王陛下」
ドアの向こう側から声がする。
ノックとか、しないのだろうか。
いや、だからいつも何でフルネーム?
「なに?」
少し大きな声で部屋の中から答えた。
「お食事ができております。」
その声に気付いた従者が部屋の前にひざまずいた。
私、朝食べない派なんだけどね。
毎日ちょっと迷惑なんだけどね。
「はいはい」
て言わないとずっとそこにいるんでしょ?
ストーカー野郎!
が本音。
言わないけど…
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