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そんなことを思った所でどうにもならない。
側にあったくしで長い母譲りの薄茶の髪をとき、椅子にかけていたドレスを着て部屋を出た。
毎日毎日同じドレス。
いつもキラキラと輝く白いレースに、
赤い刺繍がとても綺麗で…
目が奪われてしまう。
ふと不思議な感覚が頭のすみに浮かぶ。
【白いドレスに赤い刺繍】
…疲れてるのかな。
そう思いながら螺旋の階段を降りた。
壁には肖像画や絵画が綺麗な額の中で眠っている。
もちろん肖像画は母のものだが、この肖像画に懐かしさを抱いたことはない。
…
階段を降りると直ぐに、小さな黒いメロンのようなものを蹴ってしまった。
「キャッ!」
軽く宙に浮いている感じがするが、その下からは細い糸のような物が地面までぶらさがっている。
足にしては、体を支えきれるとは思えないが…
不意に蹴られたそれは、倒れたかと思うとフワフワと立ち上がりこっちを振り返った。
「ミーナ様、おはよぅ、ごじゃマス」
「ごめんね、また蹴っちゃった。」
「いいのでス
私小さくて黒くて
丸いから
見えにくいしデス」
さっきまでは掃除をしていたのだろう。
そう言うと急いで転がっていた小さなモップを持ち、また床をふき始めた。
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