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「何?別れたいの?」
今日もこの会話になった。
「実は…」
でも今日は“いつも”とは少し違っていた。
「…え?」
彼女の声と目の色に動揺が見えた。こんな彼女は初めてだ。
「確かに君と馬鹿をやるのは楽しかったし一緒にいて落ち着くのも事実だよ」
今まで彼女と付き合って感じた素直な感想を言う。
「じゃあ…なんで」
未だに動揺は隠せないらしい。
「僕思ったんだ、君と普通がしたいって」
「普通?」
彼女は首をかしげた。無理もない彼女と付き合って普通なことなどほとんどしていない。唯一本当に普通なことと言えば、間に挟む生理現象くらいだろう。
「普通にキスがしたいし、普通にセックスがしたい、人前でイチャイチャってのも恥ずかしいけどしてみたかった。でもそれを求めてしまったら君はきっと僕から離れてしまう」
「だから、別れたいの?」
彼女の動揺は混乱に変化したらしい。
確かに皮肉な話しだ。君に普通を求めればこの関係は崩れてしまうと分かった今、僕はそれを自分から崩そうとしている。だけどそれしか思いつかなかったんだ…
…だから別れてくれ」
どこから口に出ていたは分からないくらい不安定な理由を言って答えも聞かずに彼女に背を向けた。
彼女は追っては来なかった。
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