第一章

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 公園で少年と出会った日から、沙世の家の中の空気ががらりと変わった。  人が変わったような父親と、それに同調するかのような母親に、沙世は怯えながら日々を送った。  少年と約束した絵は、結局描けなかった。  スケッチを取り上げられたからではない。  変わってしまった家の空気が、沙世に絵に集中する事を許さなかった。本能が何かを察知して萎縮しきってしまい、絵に向かう事さえできなかった。  そして、約束の日の前日。  父親が数人の男達を家に連れて来た。  これから山にでも入りそうないでたちの、陽に灼けた、屈強そうな男達。それぞれ何やら大切そうに、長方形のバッグに入った荷物を抱えている。  父親は彼等を猟友会メンバーだと紹介した。 「猟友会……?」  訝る沙世に、父親はあのぎらついた瞳で平然と言い放つ。 「いいか、彼等が麻酔銃を構えて隠れているから、お前は少年を引き付けておくんだ。あの犬を逃がすんじゃないぞ」 「麻酔銃!?」 「お前がいれば油断するだろうから、簡単に捕獲できるだろう。いいな」 「ちょっと待ってよ! どういうコト!?」  突然飛び出した物騒な言葉に、沙世は蒼褪める。  いったい父親は何を言っているのか。 「あの少年が連れていた犬は、間違いなく『ニホンオオカミ』だ」 「え?」
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