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遠くから気付かれないように様子を伺うために、そっとその女性から離れるように涼と沙羅が動き出した時、その女性に変化が現れ出した。
「え?何これ?何ここ?」
ようやく目の前の状況を受け入れ始めたのか、その女性は辺りをキョロキョロと見渡し始める。
暗闇の中、弱いながら光を放っている涼と沙羅には気付いていないようだった。まあ、最初にこの場所に来た時のことを考えれば、気付かないのも無理はないなと二人は思っていた。
「ゲーム中断して、モバゲーやろうと思って携帯開いて……あれ?」
相当混乱しているらしく、その女性はしきりに首を傾げていた。頭の中は「?」のマークで埋め尽くされていることが想像できる。
涼と沙羅は、混乱していてもそれを分かち合える誰かがいたから、混乱が解けるのが早かったのだろう。
そうならば、その混乱している女性のためにも、早く出ていってあげた方がいいのではないか。二人はそう思い、苦笑を浮かべればその女性に近付いていった。
「あの……箒星さん?」
涼が確認の意味も込めて、おそるおそるといった様子で訊ねる。まあ、先程の独り言の内容から確信を得ていたのだが、念のためだ。
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