偽りの日常

17/19
前へ
/301ページ
次へ
「ちぃっとばかし、熱く語ってただけですよ。魔武器について」 「……それならいいのですが」 目を細めたカナリアが、ジークを見る。それに、肩をすくめて答えて見せた。 ふぅ、とカナリアは息を吐き出し、ジークから視線を外して教壇へと立った。 「全員席に着いてください。授業を始めます」 異論はなく、全員が粛々と従う。リガルも憎々しげにジークを一瞥した後、舌打ちとともにジークに背を向けた。 「さて、今日の授業ですが」 一同を見回して、カナリアが口を開く。 「例年よりやや早いのですが、魔武器の生成を行います」 瞬間の静寂。そして、喜びの声が教室に舞う。 魔武器の所持は、魔術師の必須アイテムだ。それの生成というのは、いわば人生の一大イベントにも等しい。 「にーさま。ふぃーはもう魔武器持ってるよ?」 隣の席に座るフィオーネが、ジークを見上げてそう言う。 「知ってるよ。ありゃあ、一級品だからな」 思わずジークは苦笑い。いつも一緒にいるフィオーネの魔武器を、ジークが知らないはずはない。 「そうなのかい?」 と、話に割り込んでくるケビンが一人。 身を乗り出すようにしてジークたちの間から顔を出し、にこやかに笑う。 「そう言えば、フィオーネちゃんの魔武器はまだ見たことがないね」 「そーだっけ? ふぃーはケビンのも見たことがないんだよ」 「嘘つけ。何度も見たろうが」 「……? 覚えてないんだよ」 「ひどい……」 きょとんとした顔で、首をかしげるフィオーネ。うなだれるケビン。 だが、フィオーネが覚えていないはずはない。 ケビンをからかっているだけだろう、とジークは判断する。 くすくすと。笑い声と共に、アリスも会話に加わる。 「可哀想なケビン。ですがそうですね。そう言えばフィオーネさんの魔武器は、私も見たことがありません」 「……私も」
/301ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4664人が本棚に入れています
本棚に追加