偽りの日常

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カチャッと小さな音を立てて抜き放たれた、黒いククリ刀。その愛刀に優しく口づけをし。 「なぁ、“無銘”?」 呼びかけた。 瞬間。 ククリ刀が淡く光った。 漆黒の刀身、それ自体に変化はない。だがその表層の奥に、赤や青の色を浮かび上がらせ、瞬いている。 どうよ、とヴィガルを見やれば、衝撃を受けて固まっていた。あんぐりと開いた口が滑稽だ。 どうやら知らなかったらしい。 「確かに。魔武器には例外なくそういう習性があるね。オレのもそうだし」 くすくすと笑いながら、ケビンも同意し、 「……私の“紅桜(べにざくら)”も」 視線をそらしつつ、シシィもそれに続く。 周囲で頷いているクラスメートもいた。おそらくは魔武器を持っている者たちだろう。 「んで、だ。どうみてもお前のインフェルノとやらにはその兆候がないわけだが……これはどういうことだろうね?」 あくまで爽やかに、ジークはヴィガルに微笑みを向ける。内心ではニヤニヤと笑いながら。 今、クラスメートたちの疑いの視線が、矢のようにヴィガルへと突き刺さっていた。先ほどまでの自慢話は嘘だったのかと、そう言いたげに。 「お、お前よくも……」 「何かな? ヴィガル・リグレイア君?」 憎々しげなその視線を、ジークはまっすぐに見返した。 「よくも―――」 「何を騒いでいるのですか??」 涼やかな風の音のような声が、教室に響く。 全員が一斉に声のしたほうへ、教室の前を見る 「決闘、またはその類ならば、職員に書類を提出した後、行ってください。それ以外の私闘は、校則違反に値しますが??」 「そんなんじゃねぇっすよ、カナリア先生」 ジークは澄まして答える。
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