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「ちぃっとばかし、熱く語ってただけですよ。魔武器について」
「……それならいいのですが」
目を細めたカナリアが、ジークを見る。それに、肩をすくめて答えて見せた。
ふぅ、とカナリアは息を吐き出し、ジークから視線を外して教壇へと立った。
「全員席に着いてください。授業を始めます」
異論はなく、全員が粛々と従う。リガルも憎々しげにジークを一瞥した後、舌打ちとともにジークに背を向けた。
「さて、今日の授業ですが」
一同を見回して、カナリアが口を開く。
「例年よりやや早いのですが、魔武器の生成を行います」
瞬間の静寂。そして、喜びの声が教室に舞う。
魔武器の所持は、魔術師の必須アイテムだ。それの生成というのは、いわば人生の一大イベントにも等しい。
「にーさま。ふぃーはもう魔武器持ってるよ?」
隣の席に座るフィオーネが、ジークを見上げてそう言う。
「知ってるよ。ありゃあ、一級品だからな」
思わずジークは苦笑い。いつも一緒にいるフィオーネの魔武器を、ジークが知らないはずはない。
「そうなのかい?」
と、話に割り込んでくるケビンが一人。
身を乗り出すようにしてジークたちの間から顔を出し、にこやかに笑う。
「そう言えば、フィオーネちゃんの魔武器はまだ見たことがないね」
「そーだっけ? ふぃーはケビンのも見たことがないんだよ」
「嘘つけ。何度も見たろうが」
「……? 覚えてないんだよ」
「ひどい……」
きょとんとした顔で、首をかしげるフィオーネ。うなだれるケビン。
だが、フィオーネが覚えていないはずはない。
ケビンをからかっているだけだろう、とジークは判断する。
くすくすと。笑い声と共に、アリスも会話に加わる。
「可哀想なケビン。ですがそうですね。そう言えばフィオーネさんの魔武器は、私も見たことがありません」
「……私も」
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