四隅

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「ああ、それで合ってる。その話は結構有名だぞ」  彼はそう言うとメモを用意し、手に持ったシャープペンシルでサラサラと図を描きだした。 「つまり、ここで最初の走者。これを例えばAとする。この先、時計回りにB、C、Dとした時、再びこの角に戻ってくるDは誰もいない角を通るわけだ」  その図の角の、走者を表す黒丸の右上にアルファベットを書き、その軌道を描くと、彼はフッっと笑い、言った。 「にも関わらず、ここでAは存在する。何故ならAは実は仕掛け人で、AはBのいる角へ行った後、またスタート地点。即ち、Dが最終的に触る場所へ戻るんだ。するとAは今度は現在Bのいる場所。――即ち、最初にCがいた部分だな――に、二つ分駒を進めるんだ。こうすることでこれは回る」  彼は一通り説明を終えると、何か質問は? と俺に投げかけてきた。俺はこの完璧な答えに何も言う事ができず、うーむと唸る事しかできなかった。
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