四隅

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 俺は今、この先輩の家でオカルト話をする為に来ていた。といっても、ただの空論でなく、今度の旅行の時にこれをネタに女の子を脅かそうという事だった。コレをネタに女の子の部屋に潜り込めれば儲けモン。その程度だった。  この話の基盤。アーキタイプは雪山での怪談だ。暗い部屋に四人の男女があつまり、夜を越す。しかし雪山の寒さに耐えうる筈もなく、四人は全員が眠りに落ちようとしていた。そこで一人が言うのである。「そうだ、全員が全員を起こし合おう。一人ずつ四隅に行き、壁を這って移動する。そうしてグルグル回れば、いずれ朝が来るだろう」  そういってこのバトン渡しは始まるのだが、このゲームは元々四人では成立しない。即ち、五人必要なのである。つまり、“いるはずのないもう一人”がいるという、怪談である。  ありがちな話だが、まぁ女の子を怖がらせるには充分だろう。そう考え、このプランを採用する事にした。
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