クリスタルレイルSOS

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四人が楽しそうに大富豪に興じている横を、一人の男性が通り過ぎる。ワイシャツにコート1枚という簡素な服装で寒くないのだろうか? そんな男性のコートから、黒革の財布が落ちる。そしてそれはレンの足に当たった。 「ん?」 レンはその財布を拾い上げ、すぐ横を通った男性を呼び止める。 「すいません。財布を落としましたよ」 言われてから、男性は慌ててポケットを探る。 「あぁ本当だ!いや、ありがとう」 男性は思ったよりも気さくな人だった。財布を拾ってくれたお礼にと、レンに駅弁を差し出した。 「え~、レンだけズルい!」 「俺にくれるって言ったんだぜ?」 「それはそうだけど……」 そう言って諦めてくれればいいものの、サヤの駅弁を見つめる目は、最早人間の目ではなく、餌を見つめて今か今かと襲いかかろうとする猛獣の目そのものである。 「……分かった分かったよ」 観念したのか、それともサヤの迫力が勝ったのか、サヤは駅弁を貰い早速食べ始める。 「とてつもない食い意地……」 ダイキが冷ややかな目で見るのなどは関係無しに、サヤは駅弁を黙々と食べ続ける。 「私達もお昼にしましょうか?」 「そうだな。確か電車の中に売店があったよな……」 「じゃあ行くか。サヤ、荷物を……」 サヤは残りの駅弁を流し込み、急いで立ち上がる。 「私も行く!」 「まだ食うのかよ!」 結局、全員で駅弁を買うこととなったわけだ。しかし、サヤのこの食欲は一体何処からくるのだろう? あの後、サヤは駅弁をもう1つ平らげ、間髪を入れずにサンドウィッチまで平らげてしまった。これには、ダイキやレンに加え、ミキまでもが呆れかえってしまった。
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