クリスタルレイルSOS

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ただいま暴走中の列車、クリスタルレイルの機関室に、見た感じ車掌とは程遠い風貌の集団が、何かのデータを録っていた。 「ジャンヌ様、第一出力機関のデータを採取しました」 ジャンヌ、と呼ばれた女性は振り返り、そのデータを興味深く眺める。 「何か……分かりますか?」 すると、ジャンヌはニッコリと笑い 「全く分からないわ」 と、データを返してそう答えた。 「それでも、ボスならば何かを見出だしてくれるはず……あとは第二機関のデータだけね」 「あの……失礼ですが……」 と、遠慮した様子で先程第一機関のデータを採取していた研究員がジャンヌに話しかける。 「何かしら?」 「何故最初にブラックリストの二人を襲撃しなかったのですか?」 「……あなた、遊びを優先して課題を後回しにしてたでしょ?」 唐突な質問に、研究員は不意をつかれたものの、冷静にはいと答えた。 「それではダメよ。最初にやるべき事を済ませてから遊ぶなら、誰も文句は言わない。事実私は今までかなり無茶苦茶な事をしてきた……けれどもやるべき事はきっちりとこなしてきたわ。だから今でも幹部として居座れる。つまり、苦は楽の種……ということ。納得できたかしら?」 「は、はい!」 研究員は一礼し、元の場所に戻る。 チームファウスト幹部、ジャンヌ。チームファウストの幹部の中でも最も部下からの信頼が厚い人物であり、寛大で器の大きい人物である。 「チームファウストの幹部は変わり者が多いけど……ジャンヌ様はいたって常識的な人だから安心できるよな……」 「あぁ、ホントにジャンヌ様の下に配属されてよかったと思うよ……もしレイヴンさんの下だったら……」 などと無駄話をしていても、全く注意する気配もない。ただ…… 「ねぇ、ちょっといいかしら?」 近くにいた部下を呼び、雑誌の切り抜きを見せる。 「仕事終わりのスイーツ、モモンの実のタルトとナナシの実のショートケーキ、どっちがいいと思う?」 「いや、あの……仕事に集中してください……」 「決めたら取りかかるわ。さぁ、どっち?」 「いや、どちらかと言われたら……タルトかなぁ……」 「んー……いいわ、両方買いましょ」 「えっ、僕の意見は……?」 どこまでもマイペースなのが玉にキズである。
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