クリスタルレイルSOS

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三人が前の車両に進んだ所に、その人物はいた。 「あら、思ったよりも早かったわね」 そこにいたのはジャンヌだった。その長い金髪の髪を揺らし、三人を見つめる。 「あなたは……」 「ウッハー!べっぴんな姉ちゃん!」 緊張の面持ちを見せるサヤとミキとは対称的に、だらしなく鼻の下を伸ばすダイキ。 「あら、素直な男の子ね。そういう子も嫌いじゃないわ」 「じゃあ……一緒にお茶でも……」 だが、例の如くサヤの鉄拳制裁によってその言葉は遮られる。それどころか、今度はミキまで制裁に加わる。 「ちょっ、ミキ!ごめんって!マジで!」 「この緊張感の中で……なんとはしたない!折檻です!」 そのダイキの有り様と、ミキの豹変ぶりに、サヤとジャンヌの動きは完全に停止する。 「……そろそろ始めましょうか?」 「……そうね」 とりあえず二人を無視して、互いにモンスターボールを構える。 「お願いコリンク!」 「ニャルマーでいこうかしら?」 互いのポケモンの相性は普通だが、ニャルマーの素早い動きは、他のポケモンを翻弄する大きな武器となる。 「コリンク!噛みつく攻撃!」 「真っ直ぐな攻撃ね……嫌いじゃないわ」 コリンクがニャルマーに噛みつこうとするも、ニャルマーはその僅かな空間を縫うように交わす。 「早い!」 「ニャルマー、騙し討ち!」 「ニャー!」 その長い尻尾で跳躍、コリンクの頭上からキツイ一撃を叩き込む。 「どう?ニャルマーの繰り出す柔軟性溢れる攻撃、あなたに見切れるかしら?」 「くっ……強い……なら放電よ!」 「リーッ!」 コリンクが広範囲に高電圧を放つ。流石の速さを持つニャルマーも、その広い電流にはかなわない。 「速さを持つニャルマーを相手に広範囲の攻撃……やるわね」 どうもおかしいと思ったサヤは、率直に聞きたい事を口にする。 「あなた……チームファウストの人間とは思えないくらい……本当にチームファウストの人間なの?」 「あら、心外ね。チームファウストの人間は正々堂々ではいけないのかしら?」 「そうじゃないけど……」 「私はね、自分に嘘をつきたくないの。だから組織の任務は全うしつつ、自分の信念を貫く。それが私の生き方……」 珍しい人もいるものだ……サヤはそう思わざるを得なかった。
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