クリスタルレイルSOS

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ジャンヌはしばらく腕を組んでじっとしていたが、しばらくして腕時計を見る。先程列車が運転を再開してから既に20分は経っていた。 「少し遅いわね……まぁいいわ。ただ待つのも暇でしょうから、私が答えられる範囲の質問は受け付けるわ」 どこまでも一般常識から外れているジャンヌ。 しばしの沈黙の後、サヤが慎重に問う。 「あなたは……どうしてチームファウストのメンバーなんかに……」 「あら、そんな事でいいの?なら答えてあげる」 ジャンヌは一旦息をつくと、再び変わらぬ調子で話し始める。 「私はね、以前までポケモンの保護施設で働いていたの。その施設は一般に捨てられたポケモンや傷ついたポケモンを保護していたの……」 「捨てられた……ポケモン……」 「そう。だけどね、ポケモンを捨てるトレーナーは決まってこう言ったわ……『使えない』と……」 「酷い……」 「その通り、人間とは非情な生き物。平気で人を裏切り仲間を捨てる……そういう人間も少なくないわ……」 「それと……あなたの入団にはどういう関係が?」 「急かさないで。私はそんな現状に失望した。そしてポケモンを捨てる人間を何とかするのではなく、弱いとなじられるポケモンを無くせばいいと考えるようになったわ……」 「それで……チームファウストに……」 「たまたま利害の目的が一致しただけ、だから私は幹部の中ではかなり自由に行動できるの……」 ジャンヌの話を聞いていた三人だが、やがてサヤが口を開く。 「でも……だからってポケモンを薬で強くさせるなんて非道よ!」 「ではあなたに別の具体的な方法が考えられる?」 「それは……」 ジャンヌの鋭い指摘に押され、サヤは再び黙ってしまう。 「確かに薬で強化するのは非道かもしれない……でもね、元々人間はポケモンと対等になどなれない……人間は常にポケモンを崇め敬わねばならない……それが本来のポケモンと人間のあり方……それを守れば使えないとなじられるポケモンはいなくなる、そしてそれがポケモンと人間の共存する理想の世界……少なくとも私はそう考える……」 ジャンヌの話に三人は沈黙を余儀なくされた。ジャンヌの言うことは誤りではないし、人はそれぞれの考えを持つ。ジャンヌのような考え方を真っ向から否定することは、三人にはできなかった。
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