クリスタルレイルSOS

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「ベロリンガ、叩き付ける!」 「燕返しで応戦しろ!」 レンとジャンヌの一騎討ちは白熱した展開を見せているが、不意に凄まじい破裂音と共に、列車が強く揺さぶられる。 「な、何だ!?」 ダイキが窓から外を見てみると、後ろの車両から煙が吹き出ていた。よく見れば煙に混じって炎が上がっているのが確認できる。 「ジャンヌ……いつまで遊んでいる?既に撤退を命じたはずだ。今すぐに帰還しろ」 どこからか声が聞こえる。もっとも、ボイスチェンジャーを使用しているようで、誰かは分からないのだが 「分かりました。では……」 そう言うと、ジャンヌは襟元のワッペンに軽く触れ、ベロリンガをボールに戻す。 「決着をつけられなかったのは残念だったわ。でも、久しぶりに楽しませてもらったわ」 そう言って、部下達を率いて後ろの車両へと走り出す。 「待て!」 レン達も追いかけようとしたのだが、突然車両内が黒い煙に覆われる。ポケモンの技、黒い霧だろう。視界が晴れた時には、もうそこにジャンヌ達の姿はなかった。 「逃がしたか……」 レン達は、救助が来るまで爆発で出来たであろう大穴を見つめていた。 その後、救助隊と警察が到着し、無事に終点までたどり着く事ができた。その後はお決まりのように事情徴収がされたのだが、ユタカのフォローによって疑われるような事にはならなかった。そして、ユタカにチームファウストの事を話した上で、ようやく解放させたのであった。 「うが~……もう夕方かよ……」 駅から出ると、辺りはオレンジ色に染まっていた。 「今日は様々な事があって疲れました……」 「なぁ、早く宿に行って休もうぜ~」 「賛成です……」 そう言って歩みを進めるダイキとミキの後ろを、深刻な面持ちをしたサヤと、それを見るレンが続く。 「あのジャンヌって人が言ってた事……私は間違ってるって言えないよ……」 「仕方無い事だろ……俺達は違う信念を貫いている。それが対立する限り、俺達は奴等と戦わなきゃならない……」 サヤは黙ったまま頷き、目の前に沈みゆく夕日を眺める。 オレンジ色に輝くそれは、サヤの目には、いつもより眩しく見えた。
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