狐の恋は燃える赤

2/16
前へ
/177ページ
次へ
レイクシティの温泉街にそびえる数々の温泉宿、それぞれがそれぞれの特色を持ち、宿を選ぶのもまた旅の楽しみと言えよう。 レン達が滞在している旅館は、レイクシティの雪景色を見ながら楽しめる露天風呂を始めとした、様々な温泉が売りである。 しかし、そんな温泉に入らない二人がいた…… 「チクショー……何だってこんな部屋にぃ……」 ダイキは畳に寝そべり、愚痴を垂れている。 ダイキが愚痴を垂れるのも無理がない。レン達が泊まる部屋だが、鍵が壊れていた。幸い、修理の人が来てくれるようで、就寝までには直してくれるらしいのだが、誰かが温泉に入りに行く間、別の人間が見張りをするという至極面倒くさい事をする羽目になったのだ。しかも、レディーファーストだのと都合の良い言葉を並べた(特にサヤ)によって、ダイキとレンが見張りを任される事となった。 「随分安いと思ったら……そういう事だったのか」 合点がいったというように一人納得するレン。こんな状況でも自分のペースを崩さない彼はある意味すごい。 「つーかさぁ、気になってたんだけどさぁ……」 暇だからか、ダイキが寝そべったままレンに話しかける。 「どうしてレンはサヤと旅をしようって決めたんだ?」 「どうして……と言われてもなぁ……とりあえずヒガン博士から頼まれたわけだから……」 やっぱり……と言ったように、ダイキがため息をつく。 「やっぱそうかよ……ったく、人に押し付けるのは達人並だよ、内の母親は」 「母親?じゃあヒガン博士は……」 「俺の親だよ。あれ、言ってなかったっけ?」 「あぁ、初耳だ。しかしダイキの母親だったとは……」 「まぁ、疑うのも無理ないか……だって自分の子供の事も他人みたいに君付けで呼ぶんだからな」 「そうだったのか……」 しばらくしていると、鍵の業者が来たので、一応部屋は業者に任せ、二人は温泉に入りに行った。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

310人が本棚に入れています
本棚に追加