狐の恋は燃える赤

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トンネルを抜けると、そこは雪国だった……そう書いた文豪もいた。それくらい、雪景色というのは人の心に印象深く残るものである。 レンとダイキも、趣き深い雪景色の中の温泉を堪能していた。 「しっかし気持ちいいぜ~……疲れが吹き飛ぶっつーか……」 「そうだな……毎日こんな温泉に入れれば、これ以上無いって程幸せだけど……」 「本当だよな~……」 露天風呂に浸かり、今日1日の疲れを癒すその隣―衝立を隔てた横の露天風呂には、サヤとミキもまた、露天風呂を堪能していた。 「ふぅ……眠くなりそうなくらい気持ち良いですねぇ~……」 気持ち良さからか、微妙にミキの語尾が伸びてきた。 「そうね……」 そんな言葉を聞いているのかどうか疑わしくなるような生返事で返すサヤの視線の先は、ある一ヵ所に固定されていた。 「あの……先程からじろじろ見られて……その……恥ずかしいんですが……」 ミキは頬を赤らめながら、サヤの視線を反らそうとモジモジと動く。 「うん……それでさ、ミキちゃんいくつだっけ?」 「13……です」 サヤの視線を避ける為、サヤに背を向けるような体勢を取るも、その体勢の取り方が仇となる。 「……!?」 声が出なくなるほどビックリしたのか、ミキの体が、まるで雷に打たれたかのように一瞬跳ねた後、そのまま動かなくなる。 「あの……サヤ……さん……」 「私より2つ下なのに……このけしからん膨らみは何……かな?」 サヤの目は完全にドS、あるいは変態の目をしていた。 「やっ……あの……揉まないで……ひゃっ!やめてください!きゃっ……だ、誰かぁ!」 ほぼ半泣きで助けを乞うミキだが、不幸にも、周囲には(うへへへ……と奇怪な笑い声をあげてミキにセクハラ行為を働くサヤを除いて)誰もいなかった。 「な~んか隣が騒がしいな……」 「まぁ、サヤにとっては久しぶりに一緒に風呂に入れる友人ができたんだ。少しばかりテンションが上がっているんだろ」 「そうかもな」 二人はさほど気にする事もなく、またゆっくりと疲れを癒す。ミキの悲鳴を軽く聞き流しながら……
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