狐の恋は燃える赤

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「この薪……」 そう言って薪を拾い上げると、この寒さの中にも関わらず、炭のようになった部分は固くなっていなかった。 「どうしたの?」 不思議に思ったのだろうか、サヤが近寄ってきてレンの持っていた薪を、興味津々で眺める。 「この薪……燃やした後みたい……」 「そうだ。誰かが使ったみたいだな」 「でも誰が……」 「さぁな、そこまでは分からない」 とりあえず、この休憩の間に二人は昼食をとることにした。全てのポケモンを出すと、流石に小屋の中が狭く感じる。 昼食の準備をレンがしている間、サヤががポケモン達の面倒を見る。この役割はレンが決めた事だった。 一度だけ、サヤの作った料理を食べたレン、その後は悲惨なものだった。それ以来、レンは料理にだけは時間を惜しまなくなった。 さて、ポケモン達はといえば、ベイリーフとチルットが物珍しそうにルクシオを凝視していた。 「そういえば説明がまだだったね。このルクシオは昨日コリンクから進化したのよ」 サヤはルクシオの頭を撫でながら、二匹に見せる。 「ベーイ!」 すると、先程まで多少の警戒心を見せていたベイリーフが、ルクシオの顔を舐め始める。チルットも、ルクシオの頭の上でピョンピョンと嬉しそうに跳ねていた。当のルクシオは、別に嫌がりはしなかったものの、少し困ったような顔をしていた。 「よし、できたぞ」 レンがエプロンを付けて料理を持ってくる。最初にこの姿を見たサヤは大爆笑したのだが、今では見慣れた光景なので格好については何も触れない。 「今日は何を作ったの?」 「チーズフォンデュだ。これで残ってる食材はほとんど無くなったな……」 「じゃあこれを食べたら買い物しましょ!」 「そうしよう」 レンもポケモン達を出して昼食を囲む。この小屋の中の穏やかな様子を、窓の外から眺める影があった……
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