狐の恋は燃える赤

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レンの作った昼食を食べながら、サヤは窓の外をチラチラと気にしている。 「サヤ、さっきからどうした?」 「えっ、外に誰かいるのかなぁー……って」 「外に?」 気になったレンは、立ち上がって窓を開けてみる。そこには誰もいなかったものの、階段状に積まれた丸太が湿っているのが分かった。 「どうやら何かがいたみたいだな……」 「でしょ?でも誰が……」 「それはすぐに分かるさ」 そう言うと、レンはパンを千切って窓辺に置き、その傍で身を潜める。 しばらくして、丸太を踏むような音が聞こえ、窓辺にひょこっと赤と茶色が混じったような色の耳が現れ、そのうち体全体が見えた。 六本の尻尾を持つ小さい狐のようなポケモンが現れたのであった。 「あ、かわいいポケモン……」 「こいつは……ロコンだ」 「ロコン……」 ロコンは、パンの匂いを嗅ぐと、美味しそうに頬張った。そして、パンを平らげてしまうと、真っ直ぐベイリーフに近づいていく。 「ベイ?」 ベイリーフが首を傾げる。見たこともないポケモンがいきなり近づいてきたのだ、当然だろう。 「コーン!」 そのロコンが一回鳴くと、ベイリーフに擦り寄った。ベイリーフは困惑の表情を浮かべているが、ロコンはお構い無しといった様子だ。 「ガウッ!」 と、先程まで黙って見ていたルクシオが急に吠えた。先程まで上機嫌に頬擦りをしていたロコンも、チラリとルクシオの方を向く。 「ガウッガウッ!」 「コーン!」 どうやら言い争いをしているようだが、レンとサヤには、何を言っているのかまるで理解できない。 「おい……こいつら一体何を?」 「分かんない……」 そんな呑気な会話とは裏腹に、ルクシオとロコンは真剣……というよりは敵意剥き出しで言い争いを続ける。 「んー……もしかしたら……」 「何か分かったのか?」 「これはきっと……」 と、わざと間を置いて話を伸ばそうとするサヤ。そして、サヤが口を開く…… 「これは恋よ、恋争いよ!」 その発言に呆れたレンは、サヤを無視して食事の片付けをし始めた。
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