狐の恋は燃える赤

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「っと、とりあえずルクシオはボールに戻しておくか」 流石に二匹を抱えて運ぶのは骨が折れるだろう。勝手に他人のポケモンを戻すのはどうかと思うが…… ともかく、これからサヤと合流しなければならないのだが、どこにいるのか検討もつかないサヤを闇雲に捜しても見つかる確率は極めて低いだろう。とすれば、できる事は限られてくる。 レンは温泉宿に戻り、フロントで部屋の鍵を受け取る。そして、滞在している部屋に入り、自分のポケモバを手にとる。そしてサヤに電話する。 「もしもしレン?」 「あぁ、ルクシオとロコンを見つけた」 「本当に!今どこにいるの?」 「宿にいるよ」 「オッケー、すぐに行くわ!」 ガチャリと、電話が切れる。その間僅か20秒 サヤが着くまでの間、とりあえずロコンを見ていなければならないが、先程のように逃げ出すような素振りは見せない。疲れたのだろうか? ただ、サヤがこのロコンをゲットしたならば、この街のジム戦はかなり楽になる。炎タイプのロコンなら、ある程度の氷タイプのポケモンを倒せるからだ。 しばらくして、サヤが息を切らせて部屋に入ってきた。 「ルクシオは……どこ?」 レンは机の上のモンスターボールを取り、サヤに投げる。サヤに当たったボールはポンッと音をたてて開き、中からルクシオが出てきた。 「ルクシオ!」 サヤはルクシオを見るなり、自分の方に抱き寄せる。 「心配したんだよー……でも怪我も無くてよかった」 「ガウ……」 抱き締められたルクシオは、ちょっと苦しそうに、そして恥ずかしそうにしていたが、やはり嬉しかったのだろう、しきりにサヤの頬を舐める。 「アハハ!くすぐったいよ」 サヤはしばらくルクシオと戯れた後、ルクシオをボールに戻してロコンの方を向く。当のロコンはサヤを無視している。 「全く……このロコンのせいで大変な目にあったわ」 「じゃあどうする。こいつを警察に突き出すか?」 サヤはうーん……と、首をひねって考えている。なかなか決心がつかないようなので、レンは先程思った事を提案する。 「お前がこのロコンのトレーナーになったらどうだ?」 「私が?」 サヤはまじまじとロコンを見つめるが、やはりロコンは何も反応を示さない。
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