狐の恋は燃える赤

13/16
前へ
/177ページ
次へ
「そうね……よく見ればこの子も結構かわいいし」 そう言って、サヤがロコンを撫でようと手を伸ばすと、ロコンはその手を交わし、逆にサヤの手首に噛みついた。 「いったぁぁぁぁ!!」 サヤが悲鳴を上げて腕を振り回し、ロコンを離そうとするも、ロコンはかなりがっちりと噛みついていて、なかなか離れそうにない。 「あーあ……まったく……」 レンが呆れたように立ち上がり、ロコンを力づくで引き離す。ロコンに噛みつかれた部分は、出血はしていなかったものの、綺麗に歯形が残っていた。 「うぅぅ……よくもやってくれたわね……」 手首を押さえながら、サヤはゆっくりと立ち上がり、レンに取り押さえられているロコンに近づく。ロコンも流石にまずいと感じたのか、暴れるのを止めてサヤを凝視している。 「もういいわ……バトルよ!絶対に捕まえてこき使ってやる!」 「コ、コーン……」 いつも以上に迫力のあるサヤに、ロコンはなす術なく、ただ頷くことしかできなかった。 流石に室内でのポケモンバトルはご法度、二人はロコンを連れて宿の外に出て、そこでバトルを行う事にした。 「よし、じゃあロコンを放すぞ」 「うん。さーて、いきますか!」 先程とはうって変わって、サヤの表情は生き生きとしていた。やはりポケモントレーナーたるもの、ポケモンバトルになれば怒りやその他感情というものは吹き飛んでしまうのだろう。 「ロコンは炎タイプ……そしてフィールドは雪原……だったら草タイプのベイリーフと飛行タイプのチルットを出すのは好ましくない……」 サヤのポケモンは、ベイリーフとチルットを除けば、残るポケモンは一匹となる。 「疲れてるかもしれないけど……お願い、ルクシオ!」 ボールが地に放たれ、その中からルクシオが颯爽と登場した。そして、サヤの手元にボールが戻ったのを皮切りに、二匹は雪の舞い散る雪原を一直線に駆けていく。 「ルクシオ!手始めにスパーク!」 「ガァウ!」 ルクシオが電気を纏い、ロコンに向かって更に加速する。負けじとロコンも、電光石火でスピードをあげてルクシオに対抗する。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

310人が本棚に入れています
本棚に追加