狐の恋は燃える赤

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二匹の力はほぼ互角だが、ロコンにはただならぬ気迫を感じる。まるで、ルクシオから何かを奪い取ろうとするような…… 「ルクシオ!一旦離れて!」 サヤの指示通り、ルクシオはロコンから距離を取ろうと地を蹴る。しかし、その一瞬の隙をロコンは見逃さなかった。 ロコンは、ルクシオが距離を取るために地を蹴った後の僅かな滞空時間の間に、ルクシオに青紫色の炎を打ち込んだ。もちろん、空中にいるルクシオに交わす術は無く、その炎をまともに受けてしまう。 「ルクシオ!」 「ガァウ……」 ルクシオにダメージがあるようには見えなかったが、明らかにルクシオの様子がおかしかった。ルクシオは炎を浴びた部分を冷やすように、体を雪に埋めた。 「あれは……鬼火だな」 「鬼火?」 「あぁ、相手に物理的ダメージを負わせる技ではないのだが……鬼火を浴びたポケモンは火傷を負ってしまうんだ。火傷になるとダメージが蓄積するほか、攻撃力も半減させられてしまう」 「だからルクシオは体を雪に……」 「火傷を負ってしまうと勝負は不利だ。ここは潔くポケモンを代えるしかない」 「うん……」 サヤはルクシオを戻そうとボールを取り出すが、ルクシオが立ち上がり、首を横に振った。ここで退きたくないということだろう。ルクシオの目にもまた、先程ロコンにも見えたのと同じような覇気を感じる。 ルクシオの決意を感じ、サヤはルクシオのボールをしまう。 「おい、戻さないのか?」 「うん。ルクシオがやりたいって……」 レンは何かを言おうとしたが、サヤの意志を汲む事にして、また二匹に目をやった。 火傷を負ったルクシオの攻撃は決定力を失い、ロコンの攻撃も基本打点の低い攻撃のため、勝負は続き、二匹ともかなり消耗していた。 「コーン!」 刹那、ロコンが渾身の力で電光石火を繰り出し、ルクシオに迫る。が、ルクシオは一歩も動かない。 「よし、やっぱり攻めてきた。ルクシオ!」 ルクシオは目を閉じ、ゆっくりと深呼吸する。ロコンは勝ちを悟ったのか、後ろ足に力を込めてルクシオに飛びかかる。 だが、それを待っていたかのように、ルクシオを中心にしてドーム状に電流が流れ、ロコンはルクシオの放電の餌食となった。
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