狐の恋は燃える赤

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今までのダメージの蓄積に加え、威力の高い放電を受けたロコンは、雪原に叩き付けられた。 「やった!」 勝敗は決まった。サヤはルクシオを戻し、空のモンスターボールを手に取る。 「いけ、モンスターボール!」 モンスターボールはロコンを取り込み、しばらくカタカタと動いていたが、ボールの動きは止まり、捕獲完了のサインでもある中心のランプも消えた。 「よーし!ロコンゲットー!」 サヤはガッツポーズを決めると、ロコンの入ったボールを拾い、ポーチに戻した。 「これで手持ちは4体だな」 「うん!だんだんパーティーも充実してきたって感じかな?」 それにしても……と、サヤは雪原を見ながら呟く。 「あのロコン、何か物凄い気迫みたいなのを感じたけど……なんだったのかな?」 「確かじゃないかもしれないが……」 レンは、肩に付着した雪を払い落とし、サヤの隣に立つ。 「あのロコン、お前のベイリーフに恋心を抱いていたのかもしれない」 「恋心……?」 「だってさ、そうすればお前のボールを奪った理由も説明がつくし、ルクシオを恋敵だと思っていたとすれば……」 「なるほど……」 ボールを奪うのは失敗したがな……と、レンは最後に締めくくった。サヤは納得したように頷いたが、急に含み笑いをし出した。 「うん?どうした」 「いや、ちょっとね……」 と、レンを見たサヤは、また笑い出した。 「な、なんだよ……」 「だって……レンが恋心とか恋敵とか……似合わないって」 先程の事を笑われたと悟ったレンの顔は、一気に赤くなる。 「なっ!?お、俺だってそんくらい……」 「えー?多分今まで会った事のある人の中で一番恋とかに鈍感そうだもん」 「う、うるさい!帰るぞ!」 「あれ?もしかして怒っちゃった?」 「いいから帰るぞ!」 そう言って、早足で宿に向かうレン。 「あ、ちょっと待ってってばー!」 赤面しながら早足で宿に向かうレンと、それを慌てて追うサヤ。その様子は、まるで兄妹のようであった。
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