傷だらけの心

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暗い夜道、月の出ていない中、一人の男が息を切らせて走っていく。しかし地面は雪、足が埋まってしまい上手く走れない。 と、後ろからもうひとつの足音が聞こえた。その足音は男が動けないのを見ると、一歩、また一歩と男に近付いていく。 「あ……あぁ……」 男は懸命に足を抜こうとするも、体力を消耗し、体温も下がった今の状態では、満足に動く事も出来ない。 「許さない……」 背後から聞こえた声には、感情というものが感じられなかった。ただ与えられた言葉を口に出しているようであった。 「た……助けくれーー!!」 男の断末魔は、夜の闇に飲み込まれた。 「よっしゃー!やってやるわ!」 朝から気合いとテンションが最高潮のサヤ。そして、そんなサヤとはうって変わってローテンションなレン。二人はジム戦に備え、ポケモンセンターに来ていた。 「しかし……いつになく張り切ってるな」 「当たり前よ!ダイキのバカが遊び呆けてる間に追い付かなきゃ!」 なるほど、ここでサヤがバッジをゲット出来ればバッジの数はダイキと同じになる。そしてダイキは、今日もまたミキに連れられ温泉街に出向いていた。 「だからって油断は……」 「分かってる分かってる。私が油断なんてしたことある?」 「しょっちゅうだろ」 図星だったのか、サヤは苦笑し、頭を掻く。 「ま、まぁ油断なんてしないでいつも通り頑張るよ!」 と、話している内にもポケモンセンターに着いたが、何やら中が騒がしい。 「なんだろ……」 「騒がしいな……まだそこまで混む時間じゃないはずだが……」 今は朝の8時半、まだ混むにはちょっと早い。 と、ポケモンセンターからジョーイさんが出てきた。見ると、かなり疲れているようだ。 「あの……」 「あら、ポケモンの回復かしら?悪いけど少し待ってもらえるかしら。もう疲れてしまって……」 「なにかあったんですか?」 中の様子を伺っていたレンも、話に加わる。 「急患が出まして……怪我は酷くはないんですが……低体温症が……」 だけど……と、ジョーイさんは一旦話を切り、息を整えてから再び話し出す。 「一番酷いのは精神的なダメージなの」 「「精神的なダメージ?」」 見事にハモった。
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