傷だらけの心

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「精神的なダメージ……といえるかと聞かれたら、正直な所微妙かもしれないわ。とても説明が難しいの」 なんとも理解の難しい事を言われた二人は、しばらく黙っていたが、不意にレンが口を開いた。 「そういえば聞いたことあるな……」 「何を?」 「ポケモンバトル中にトレーナーが急に倒れるって話を……だ。確かその時は緊張状態がひどかったという説明がされていたが……最近では新しい見解もなされているって……あれは……確か……」 「同調現象のことね?」 「そうそう、そんな名前だったはず……」 「同調現象?」 チンプンカンプンなのか、頭をひねって何度も同じ言葉を呟いている。そしてジョーイさんが話を進める。 「同調現象とは、トレーナーとポケモンの心が通い合う現象のこと。簡単に言えば……そうね……指示をしなくてもトレーナーが出したいと思った技をポケモンが出す……などといった現象のことよ」 「へぇー!それってすごいじゃん!」 サヤは目を輝かせてその話を聞いていたが、何か引っかかったのか、首を傾げた。 「でも、それとトレーナーへのダメージってどんな関係が?」 「さっきも言ったけど、ポケモンと心が通い合っているという事は、例えばそのトレーナーが相手のトレーナーを恨んでいたら、その感情は無意識にポケモンにも伝わる。そしてポケモンは無意識のうちにトレーナーを攻撃しているというものなの」 「それって精神的なダメージじゃないんじゃ……」 「本当はそうなのだけど……今の医療の世界では精神的なダメージとして扱わなければならないという規約があるの。恐らく、ポケモンが安楽死させられるのを防ぐため……」 「そんな……ポケモンは悪くないのに……」 「だからこそ……よ。この問題は表には出ないけどかなり重要な問題なの。だから早急な解決が求められているわ」 ジョーイさんが話し終わり、しばし沈黙していると、ポケモンセンターから看護婦が一人出てきた。 「ジョーイさん!例の患者の意識が回復しました!」 「分かったわ。じゃあ私はこれで」 ジョーイさんは二人に一礼すると、看護婦と一緒にポケモンセンターの中に入っていった。
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