傷だらけの心

6/29
前へ
/177ページ
次へ
「亡くなったって……」 突然告げられた事実に、二人はただ立ち尽くすだけだった。とそこに、近くの土産屋から店主と思わしきおばさんが出てきた。そしてジムの前に立ち尽くす二人に声をかけた。 「おや、ここのジムに挑戦かい?」 「えぇ、そのつもりだったんですけど……」 「……ジムが閉鎖されてますよね?何があったんですか?」 聞かれた瞬間、おばさんは困ったような顔をしたが、やがて声のトーンを下げて話し出した。 「これはあくまでも噂なんだけど……ここのジムリーダーは殺されたみたいなのよ……」 「殺……された……」 突然の事にショックを受けるサヤだが、そんなサヤに構わずおばさんは話を進める。 「あれは一ヶ月位前かしらね……ここのジムリーダーに挑戦して負けたトレーナーがいたらしいの。そのトレーナーは何回も何回も挑んだらしいけど勝てなかったって、そして遂に逆上したらしいわ……」 「そんな……酷い……」 「しかもその犯人は自首したらしくて、執行猶予5年の有罪判決で済んだらしいわ……」 負けたトレーナーに殺され、しかもその犯人は罪を軽くした。遺族からすればたまったものじゃないだろう。 だけどね……と、おばさんはまだ話を続けた。 「その数日後に、ジムリーダーを殺した犯人が遺体で発見されたの。死因は低体温症らしいわ。だからこう噂されてるの……志半ばで殺されたジムリーダーの呪いじゃないか……って……」 「キャアァァァ!!」 話が終わる前にサヤは叫び、半泣きになりながらレンにしがみついた。 「で、その話は本当なんですか?」 「呪いの件は噂だけど……あとは事実。職業柄、こういう話は良く聞くのよ」 その後、おばさんは店員に呼ばれて店に戻っていった。 レンは、手始めにさっきから抱き着いて離れないサヤを引き剥がす事にした。 「いい加減に離れろって……」 「やだぁ……怖いぃ……」 サヤは情けない声でそう喋ると、更にきつくレンにしがみついた。 「情けない……それでも15歳か?」 「だって……怖いものは怖いんだもん……」 今のサヤを引き剥がすのは無理だと悟ったのか、レンはサヤを促し、そのままここを去ることにした。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

310人が本棚に入れています
本棚に追加