310人が本棚に入れています
本棚に追加
ジムを離れ、とりあえずポケモンセンターに寄ることにした二人は、来た道を引き返していた。先程の話を聞いてからというもの、サヤはレンの背中を掴んで離さない。
「なぁ……」
レンは立ち止まり、呆れた顔でサヤの方を向く。
「いい加減に離れてくれないか?歩きにくい」
が、サヤは頑として離そうとはしない。
「全く……昼間から幽霊なんて出るわけないだろうが……」
「そんなの分からないじゃん!もしかしたら出るかも……」
「どうでもいいから離れろって!」
「うぅ……レンはか弱い女の子を路上に平気で捨てていくのね……」
サヤは辺りに聞こえる位の声でそう嘆いた。話を聞いていた人々は、みなレンの方を向き、冷たい視線を送っていた。
「ちょっ、お前!なに言って……」
「レンは怖がる女の子を捨てて行く薄弱な人なんだ……うぅ……」
周りからの視線もかなり痛くなってきた。しかし、サヤは泣くどころか、上手くいったとにやけていた。
「ぐっ……分かった分かったよ!」
レンは諦め、また歩き出した。と、目の前に先程サヤと話していた女の子―ツバキがいた。
「なぁ、あの子って……」
「あっ、ツバキちゃんだ。オーイ!」
サヤはツバキに呼びかけ、ツバキが気付いたのを確認すると、小走りで駆け寄った。
「さっきの……サヤ……さん?」
おずおずと喋るツバキの手には、ポケモンセンターで会った時に持っていた花がなかった。
「そうよ。お見舞い、してきたんだ」
「あ、はい……」
ツバキは少し俯いたあと、顔を上げてサヤの方を見た。
「あの……サヤ……さん……」
「ん、どうしたの?」
ツバキは仄かに顔を赤くし、口ごもっていたが、意を決したのか、先程のようにサヤをまっすぐ見つめた。
「私と……お友達になって……くれませんか……?」
唐突な申し入れで、サヤは少し呆気にとられたものの、にっこりと笑って、先程と同じようにツバキの頭に手を置いた。
「私でよければ……いつでも友達になるよ」
その言葉が余程嬉しかったのだろう。ツバキは満面の笑みを見せると、サヤに抱き着いた。
「ありがとう!サヤさん!」
「どういたしまして、ツバキちゃん」
サヤに抱き着くツバキに、その頭を撫でるサヤ、二人は本物の姉妹のようにも見える。
最初のコメントを投稿しよう!