傷だらけの心

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ジムを離れ、とりあえずポケモンセンターに寄ることにした二人は、来た道を引き返していた。先程の話を聞いてからというもの、サヤはレンの背中を掴んで離さない。 「なぁ……」 レンは立ち止まり、呆れた顔でサヤの方を向く。 「いい加減に離れてくれないか?歩きにくい」 が、サヤは頑として離そうとはしない。 「全く……昼間から幽霊なんて出るわけないだろうが……」 「そんなの分からないじゃん!もしかしたら出るかも……」 「どうでもいいから離れろって!」 「うぅ……レンはか弱い女の子を路上に平気で捨てていくのね……」 サヤは辺りに聞こえる位の声でそう嘆いた。話を聞いていた人々は、みなレンの方を向き、冷たい視線を送っていた。 「ちょっ、お前!なに言って……」 「レンは怖がる女の子を捨てて行く薄弱な人なんだ……うぅ……」 周りからの視線もかなり痛くなってきた。しかし、サヤは泣くどころか、上手くいったとにやけていた。 「ぐっ……分かった分かったよ!」 レンは諦め、また歩き出した。と、目の前に先程サヤと話していた女の子―ツバキがいた。 「なぁ、あの子って……」 「あっ、ツバキちゃんだ。オーイ!」 サヤはツバキに呼びかけ、ツバキが気付いたのを確認すると、小走りで駆け寄った。 「さっきの……サヤ……さん?」 おずおずと喋るツバキの手には、ポケモンセンターで会った時に持っていた花がなかった。 「そうよ。お見舞い、してきたんだ」 「あ、はい……」 ツバキは少し俯いたあと、顔を上げてサヤの方を見た。 「あの……サヤ……さん……」 「ん、どうしたの?」 ツバキは仄かに顔を赤くし、口ごもっていたが、意を決したのか、先程のようにサヤをまっすぐ見つめた。 「私と……お友達になって……くれませんか……?」 唐突な申し入れで、サヤは少し呆気にとられたものの、にっこりと笑って、先程と同じようにツバキの頭に手を置いた。 「私でよければ……いつでも友達になるよ」 その言葉が余程嬉しかったのだろう。ツバキは満面の笑みを見せると、サヤに抱き着いた。 「ありがとう!サヤさん!」 「どういたしまして、ツバキちゃん」 サヤに抱き着くツバキに、その頭を撫でるサヤ、二人は本物の姉妹のようにも見える。
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