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「あの……サヤさん……」
ツバキは、おずおずとサヤの名前を呼ぶ。
「サヤでいいよ、ツバキちゃん」
「でも……呼び捨てはちょっと……」
そして考え込むツバキ。と、ツバキは少し躊躇うような素振りをし、改めてサヤに話しかける。
「じゃあ……サヤ……お姉ちゃん……」
「どうしたの?」
「あの……今から家に……来ません……か……?」
「今から?」
今の時間は午後の2時を回ったところだ。それに、ジムがあの様子では今は挑めないだろう。
「うん、じゃあ案内してくれる?」
「はい!」
二人が楽しそうに歩いて行くのを、ぼーっと見つめるレン。
「早くしないと置いてくよー!」
「えっ、俺も行くのか?」
「当たり前でしょ!」
「仕方ない……」
レンはため息をつくと、二人の後に着いていった。
「ここです……」
ツバキの家を見た二人は、あまりの大きさに唖然としていた。
ツバキの家は、まるで外国の超一流企業の社長邸のような外観だ。入口には門が、そして庭、噴水、まさに豪邸である。
「すげ……」
「こんなとこに……入っていいのかな?」
「あの……」
ツバキの呼び掛けに、二人は我に返る。
「どうぞ、上がって下さい」
「じゃあ……お邪魔します」
「お邪魔します……」
ツバキに導かれて入った家は、まさに豪邸といったところ、やけに高そうな壷やら皿やらその他諸々が綺麗に整理されている。
「すごいね!ツバキちゃんの家!」
「えっ……そうですか……?」
ツバキには自分の家が豪邸だという自覚はないのだろうか?
「ツバキちゃんのお父さんやお母さんってお金持ちなんでしょ?」
「うーん……よくは分かりませんけど……パパは議員で、ママはその秘書……みたいです」
議員と秘書……一歩間違えたらスキャンダルとして取り上げられそうな構図である。
「あら、ツバキ……お帰りなさい」
「あ、ママ……ただいま」
と、ツバキの母親が二人に気付いたらしく、二人に近づいてきた。
「あの……」
「あ、私達はツバキちゃんの友達で……」
「俺はこいつの付き人です」
「そうでしたか……どうぞ上がって下さい。今、お茶をお出ししますね」
そう言って、ツバキの母親は家の奥に姿を消した。
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