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「話とは何ですか?というか、何故俺に?」
テーブルを挟む形でソファに座り、黙り込むツバキの母、やがて、躊躇いがちに口を開いた。
「もう……ご存知ですか?この街のジムリーダーの事は……」
「えぇ、先程耳にしました。ですが……」
「この街の元ジムリーダー、キノは……私達の息子なんです……」
「えっ……」
突然の事に、レンは耳を疑った。しかし、この表情からするに、紛れもない事実なのだろう。
「キノは……私達家族の誇りでした。優しく、どんなポケモンも大切にする子でした……ですが……」
と、ツバキの母は目頭を押さえ、幾度か鼻を啜った。過去の辛い話をするのは、流石に堪えるだろう。
「辛いなら……話さない方が……」
「お願いです!今すぐにサヤさんをツバキから引き離して下さい!」
と、今度は物凄い剣幕でレンに迫ってきた。レンは何が何やら分からず、ただその迫力に押されるだけだった。
「早くしないと手遅れに……」
「ちょっと待って下さい!」
流石にこの無茶苦茶な状況に嫌気が指したのか、レンはテーブルを叩き、立ち上がる。
「急にジムリーダーの話をしたのかと思ったら、次はツバキとサヤを引き離せって……意味が分からな……」
と、急にガラスが割れるような音と、木のような物が砕かれるような音がした。
「何なんだこれは!」
「ツバキが……ツバキが……」
ツバキの母は、目を見開き、口元に手を当ててわなわなと震えているだけだった。
「ツバキ……って事は……」
レンは一目散に二階の……ツバキとサヤがいる場所を目指した。何か嫌な予感がする……レンはそれが杞憂で会ってほしいと願った。
レンが二階に上がって目にしたもの……それはあり得ない光景だった。
まず、絨毯は至るところが引き裂かれ、それに伴い床も所々粉砕していた。そして陶器の置物やガラスの置物が、無惨にも砕け散っていた。更にドアや窓もことごとく破壊されていた。まるで、この部屋に強盗でも押し入ったかのように……
「サヤ……サヤー!」
サヤの名を必死に叫ぶレン、やがて、瓦礫のように積み上げられた木屑の中から、サヤが這い出てきた。
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