傷だらけの心

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「サヤ!」 レンはサヤのもとに駆け寄る。サヤの服が多少汚れはしたものの、サヤに怪我はないようだ。 「まったく……一体何なのよー!」 サヤは髪の毛や服に付いた木屑を払い落とし、悪態をつく。 「それだけの声が出るんなら無事……か」 レンは安心したようにため息をつくと、サヤを引っ張って立たせた。 「一体何があったんだ?」 「それが分からないの……トイレに行ってツバキちゃんの部屋に戻ろうとしたら……」 と、サヤは急に辺りを見渡した。 「おい、一体どうしたんだ?」 「ツバキちゃんが……ツバキちゃんがいない!」 「そんなバカな!?」 「ツバキちゃん!どこにいるのー!」 二人は、慌ててツバキを捜そうと廊下を走った。そして、廊下の突き当たりの部屋に入る。すると、そこにはツバキと、巨人のような白いポケモン……ユキノオーが佇んでいた。 「ツバキちゃん!」 サヤが安堵の表情でツバキに近づく。 「ツバキちゃん大丈夫?怪我は……」 「……れ」 呟くようにツバキが発した言葉、それをサヤとレンは聞き取れなかった。しかし、振り返ったツバキの表情が、この状況をただならぬ状況だということを二人に告げた。 ツバキの目は、先程のような可憐な少女の目では無く、例えるならば殺戮を楽しむ殺人鬼のような狂気に満ち溢れた目をしており、口元はつり上がり、不気味な笑みを浮かべていた。 「ツバキ……ちゃん……?」 「お姉ちゃん……」 ツバキはそっと呟くと、その狂気に満ちた顔でサヤを睨む 「死ねぇ!」 ツバキの発狂を引き金に、ユキノオーが腕を振り上げてサヤに向かって走ってくる。ユキノオーのスピードは決して速くはないものの、ツバキに睨まれたサヤは、恐怖心からか、その場から動けなかった。 「危ない!」 レンはサヤの体にぶつかり、何とかユキノオーの攻撃からサヤを守った。サヤのいた場所には大きな穴が空き、ユキノオーの攻撃の破壊力を物語っていた。 「サヤ!しっかりしろ!」 レンに揺さぶられ、サヤはハッと我に返る。 「ツバキちゃん……どうして……」 ツバキは、サヤの呼びかけには答えようとはせず、一歩、また一歩と、サヤとレンに近づいてくる。
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