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「あなたも……昨日の人と同じ……」
「昨日の……人……」
と、サヤはふと、ツバキの手に、サヤのバッジケースが握られているのを見た。
「それは……私のバッジケース!」
「バッジケース?なんで……」
と、レンの頭に、先程の会話がよぎる。一階の客間でツバキの母親に言われた事……殺されたジムリーダーがこの家の人だという事を……
「そうか……お前の兄弟が……殺されたジムリーダーだったというわけか……」
レンの呟いた一言にピクリと反応したツバキ、今度はキッとレンを睨む
「一体どういう事?」
「話は後だ。お前は下がってろ」
「でも……」
「下がってろ!」
急に怒鳴ったレンの顔は、なにか焦燥感に駆られたような顔つきになっていた。このような状況では、経験の多いレンに任せた方がいいだろうと判断し、サヤは言われた通りに、ゆっくりと後ろに下がる。
「お前は……兄弟が殺された腹いせにこんな真似をしているのか!」
「だま……れぇ!!」
ツバキの叫びに反応し、ユキノオーがレンに襲いかかる。
「ストライク、燕返し!」
レンはモンスターボールを放ち、ストライクを繰り出す。スピードで勝るストライクが、ユキノオーに燕返しを決めると、ユキノオーは苦しそうな呻き声を上げてたじろいだ。
「ユキノオーは氷、草タイプのポケモン……ストライクとの相性はいいとは言えないな……」
レンは、自身の焦りを隠すように、ツバキを挑発する。
「くっ……」
「さぁ、おとなしくサヤのバッジケースを返せ!」
レンが一歩ずつツバキに近づいていく。ユキノオーはまだ戦闘不能になったわけではなく、また飛行、虫タイプのストライクは、ユキノオーの氷技との相性もよろしくない。レンは、ユキノオーとツバキの双方に注意を向けて、ツバキに近づく。
「昨日の人も……あなたも……お兄ちゃんの御守りを……奪いに来たんだぁ!!」
突然、ツバキが叫んだかと思うと、ユキノオーが立ち上がり、吹雪の技を繰り出した。ユキノオーの繰り出す強烈な吹雪に耐えきれず、ストライクとレンは吹き飛ばされ、壁に激突した。
「ガッ!!」
壁に激しく打ち付けられ、レンはうつ伏せに倒れ込み、ストライクは戦闘不能に陥った。
「レン!ストライク!」
サヤは、慌ててレンとストライクに駆け寄る。幸いにも、レンには傷はなかった。
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