310人が本棚に入れています
本棚に追加
「ストライクは明日には元気になると思いますので、明日、もう一度来て下さい」
二人はツバキの家を後にし、先程の戦闘で傷ついたストライクをポケモンセンターに預けに来た。
「じゃあ、よろしくお願いします」
そう言って、レンはカウンターから離れ、ソファに座っているサヤの隣に座る。
先程の騒動の後、ツバキの両親に事の経緯を話し、何故ツバキが突然暴走したのか、その理由を聞いた。
元々、あの家族にはもう一人、ツバキの兄にあたる人物がいた。兄の名はキノ、そしてキノはレイクジムのジムリーダーだった。そう、あの殺されてしまったジムリーダーである。
ツバキの母と父は、仕事が忙しく、ツバキの世話や教育は、ほとんどお手伝いさんや兄であるキノに任せっきりだったようだ。そして、人見知りの激しいツバキは、年を重ねるに連れて兄に依存するようになった。そして、あの事件が起こる……
あの事件で兄を失い、部屋に閉じ籠ってしまったツバキ、両親は、そんなツバキを心配しながらも、仕事が忙しいという事を理由に、ツバキと関わりを持たなかった。
キノを殺した犯人が殺害されたのと同じ頃、ツバキの面倒を見ていたお手伝いさん達が次々と仕事を辞めると言い出した。両親は、その事態を見て、密かにツバキを監視した。すると、ある夜、ツバキが急にベッドから起き、まるで幽霊のような足取りで部屋を出た。そして、両親はお手伝いさん達が次々と辞めていった理由を知る事となる……
ツバキは多重人格障害……いわゆる二重人格だった。それに気づいていたのは兄だけだっただろう。両親すら、ツバキを病院に連れていくまで知らなかったのだ。
医師の話によれば、兄の殺害が引き金になり症状が悪化、遂には自分でも抑えられなくなった。自分の両親を見境なく攻撃するほどに……
そして、厄介な事に、もう一つ、ツバキには内なる力が存在していた。同調現象である。自分のもう一つの人格を抑えられず、自分が敵と見なした人物を片っ端から痛め付けてきたのだ。今日あったのと同じように……
最初のコメントを投稿しよう!