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全ての話を聞いた後、二人はツバキの家を去った。そしてポケモンセンターに着くまで、二人は終止黙ったままだった。
特にサヤは、考え込んでいるのか、はたまた落ち込んでいるのかは分からないが、ずっと俯いたままだった。
サヤの様子が気になったレンは、サヤの名前を呼んでみる。サヤも、視線こそ動かさなかったが、一応反応はした。
「どうするつもりだ……明日……」
レンは率直に、今気になっていることを聞いた。サヤが考え込んでいるならこの事だろうと、たかをくくっていた。
「レンには隠せないね……」
サヤは呆れた様に笑うと、いつにも増して真剣な表情になる。
「危険なのは分かってる……だけど……」
サヤは、唇をギュッと噛みしめる。サヤ自身、思い詰めているのかもしれない。
「ツバキちゃんは今、助けを求めてると思うの……ツバキちゃんも……苦しいんだよ……」
「だから……お前がバトルしてあいつを助ける……と?」
サヤは目を瞑り、深く頷いた。
「はっきり言っておく。サヤ、お前が勝ったとしてもあの家族が変わらなければ何も変わらない。分かるか?」
サヤはまた、頷く。今日、ツバキの両親から話を聞いた際、家族としての二人の対応が間違っていると、レンが強く批判していたからだ。
「お前は明日のバトル……文字通り命懸けのバトルを制したとしても……何も変わらないかもしれない。お前の努力が水の泡になる可能性もある。それでもいいなら……好きにしろ」
「えっ……」
サヤは、顔を上げ、レンをボケーッと見つめる。
「なんでそんな狐に包まれたような顔してんだよ」
「だって……てっきりレンは反対すると思ってたから……」
あぁ……と、レンは頭の後ろで腕を組み、天井を見上げる
「どうせお前の事だ。俺が反対しても行くつもりだったんだろ?」
図星だったので、サヤは喋らなかった。
「だったら、お前に覚悟があるなら、お前の好きなようにやらせてやろうって思っただけだ。心配すんな、お前の命は俺が守ってやる」
だから……と、レンは組んでいた腕を外し、サヤの頭の上に置く。
「精一杯……やってこい」
「レン……」
サヤは、目から溢れてきた涙を拭い、笑顔で「うん!」と頷いた。
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