旅立ちの風

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「遅れる遅れるー!」 ルートタウンそのものは広くは無いため、別段迷う事などない、こういう場合を除いては…… 「遅れ……」 ふと、サヤの目に止まったのはコリンクという水色の体をした電気タイプのポケモンだ。しかも、今は無防備に眠っている (コリンク……かわいい……) サヤはヒガン博士の研究所に行くという約束も忘れ、コリンクに近づいたが 「おい」 急に男の声が聞こえたかと思った矢先に、サヤは腕を引っ張られた 「へっ?キャア!?」 急に腕を引っ張られたサヤは短い悲鳴を上げ、そのせいでコリンクは飛び起き、逃げてしまった 「あぁ!コリンクが……」 コリンクを逃し、落胆するサヤを気にも止めず、男が話しかけてきた 「お前がサヤか?」 「えっ、はい。そうですが……」 「ヒガン博士に頼まれてお前を捜しに来た。付いてこい」 「ヒガン博士……すっかり忘れてた」 サヤの顔が青ざめ、苦笑を溢す。 (……こんなんで大丈夫なのか?) 男はサヤの様子を見て、将来が軽く心配になった 「遅れてすいませんでした!」 研究所に入るなり、そう大声を出したため、何人かの研究員にまじまじと見られたサヤである 「奥に来なさい」 ヒガン博士に呼ばれ、サヤと男は研究所の奥へと進む 「こんにちは、サヤさん。それとありがとうね、レン君」 レンと呼ばれた少年……というか青年は、別段何を言うでもなく、ただ頷くだけだった 「あの……ポケモンの方は……」 「安心しなさい。ついさっきレン君が持ってきてくれたから」 「あ、そうなんだ」 サヤはチラッとレンを見た。 目付きは鋭く、無表情だが、どこか大人びた雰囲気を醸し出している。そして意外と美形であった 「という事は、サヤが5年もトレーナーを保留していたっていう……」 そう言って、レンはサヤを見た。サヤは慌てて視線を反らす 「さて、サヤさん。君にはチコリータをあげよう」 「ありがとうございます!」 サヤはチコリータの入ったボールを受け取ると、大事そうに鞄の中にしまった
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