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「昨日はごちそうさまでした」
関所を抜け、次の目的地を目指そうとした矢先、サヤがレンにそう言った。
「……リボンの事か?」
サヤは首を横に振り、耳元で
「昨日の夜にしたでしょ?キ・ス」
と囁く。
「なっ!?あれはお前が勝手に……」
レンは顔を赤くして、自分は正当だと主張する。そんなレンを見て、サヤはクスッと笑い、次は普通に聞こえる声で
「でもレンも抵抗しなかったよね?てことは、意外と乗り気だったって事?」
「違う!!俺はいきなりすぎて何もできなかっただけだ!」
「満更でもないような顔してたじゃん」
「……っ!?そ、そんな事……」
結局言い負かされ、押し黙ってしまうレンを見て、サヤは複雑な思いを胸に抱く。
(なんだろ……レンと他愛ない話をするだけなのに……なんか……胸が苦しくなる……レンは私の事、どう思ってるのかなぁ……嫌い……なのかなぁ……昨日は勢いに身を任せてあんなことしちゃったけど……やっぱりヤバかった……かなぁ……)
「サヤ……?」
自分の名前を呼ばれて、サヤは我にかえる。
「どうした?急に泣いたりして……」
「えっ……」
サヤは自分の頬を触ると、確かに水のような感触がした。
「なんでだろ……変だなぁ……なんにも……ないのに……涙が……止まらない……よぉ……」
サヤは嗚咽混じりにそう呟き、レンに抱きつく。昨日のような感じではなく、レンに助けを求めるように……
そして、レンはそんなサヤを、やさしく抱き締める。サヤが泣き止み、落ち着くまで……ずっと……
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