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サヤのジム戦から一夜明け、レンは何の前触れもなく安眠を妨害された。まぁ、妨害する人間など一人しかいないが……
「どうした?」
レンは体を起こし、安眠を妨害した張本人……サヤを見る。サヤは笑顔でレンの顔を覗き込んでいた。白い何かを頭に乗せて……
「……なんだそれ?」
「あぁ、この子はチルットよ。今日の朝捕まえたの!」
どうやら、眠っていたチルットを見つけて、運良くゲットしたらしい。それから、延々とサヤの初ゲット自慢が続いた。
「分かった、分かったからちょっと待て」
話を続けようとするサヤを押さえ、とりあえずベッドから出るレン。大きく伸びをすると、鞄から着替えを取り出した。
「着替えるから部屋から出てくれ」
「レンって恥ずかしがり屋?」
突拍子な質問に、レンの動きが止まる。
「着替えを見られるのは嫌だろ」
「別にいいんじゃない?減るもんじゃないし」
「お前、じゃあお前は見られても恥ずかしくないのか?」
「女の子は恥ずかしいよ。でも男の子は……」
「男も充分恥ずかしい。というか、何で部屋から出たがらない?」
「えっ……それは……」
レンの質問に、サヤは言葉を詰まらせる。
「……まさか」
そう言ってレンはすぐに外に出た。そして落胆した。
レンが見つめる先にあるのは、割れた花瓶と、鬼の形相でこちらを睨むジョーイさんだった。
「アハハ……ごめんなさい」
サヤはドアを少しばかり開けて、レンに謝る。
「勘弁してくれ……」
この後、レンはサヤと共に散々に叱られた挙句、レンが花瓶の代金で弁償する事となった(弁償した分は、後にサヤの母親からちゃっかりと徴収していたレンだった)。
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