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「っ……!?」
平手打ちをしたレンは何も言わず、相変わらず無表情な目でサヤを見ている
「何よ……レンはチコリータの味方をするっていうの……?」
「どちらの味方なんて関係無い、お前が間違えているからお前をぶった……それだけだ」
「何よ何よ何よ!!私は悪くないもん!なのに……私が……悪いって……」
嗚咽混じりに言い訳すると、サヤは草むらの方へと走って行ってしまった
「……我が儘も困ったものだな」
そう言うと、チコリータを見る
「仕方ないのにな……お前はいきなり親元を離れたんだからな……」
そう言うと、チコリータを抱き、草むらの方を見る
「あいつ……ポケモン持ってないよな……」
レンはチコリータを抱いたまま、サヤが向かった草むらへと足を進めた
「いきなりぶつなんて……酷いよ……」
サヤは未だに嗚咽を漏らしながら、草むらの中で一人泣いていた。
サヤはトレーナーなりたてで、チコリータが言うことを聞いてくれなかった事でパニックになった。そのせいでチコリータに八つ当たりしたのは良くない事だが、ではどうすればよかったのか?サヤの頭の中に自己防衛の言い訳が浮かんでは消え浮かんでは消えていた
「でも……ヒガン博士には……酷い事……しちゃったな……」
ヒガン博士は少ない休みをはたいてチコリータを捜してくれた。サヤの為に……だ。そのチコリータとケンカしたなんて聞いたら、果たしてヒガン博士は許してくれるだろうか?
(怒る……よね)
では今日の為に準備してくれた母は?ダイキは?
(みんな……私の事、嫌いになるよね……そしたら私、一人ぼっち……)
そう思うと、不意に不安になり、サヤは頭を抱えて泣き出した。時折、一人になりたくないと呟いて……
しばらくして、少しは落ち着いたサヤは
(謝ろう……チコリータに、レンに……)
そう決心し、立ち上がった時、
ガサガサ……
不意に茂みが揺れ、中から黒い物体が姿を現した
「や……やだ……だ……誰か……」
力無く呟き、逃げようとするが、足がすくんで動けない
「キャーーー!!!」
サヤの悲鳴が、草むらに響いた
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