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「悲鳴……?」
草むらに入ったレンは、微かに悲鳴のようなものを聞いた。そして、前方から歩いてくる男性を目撃した
「あの……」
「はい」
「グラエナ……見ませんでしたか?」
「グラエナ?」
グラエナはポチエナの進化系で、縄張り意識が強く、自分よりも強い者以外には容赦はしないポケモンである
「あぁ……ちょっと目を離した隙に逃げちゃって……全く」
男性は呟きながら草むらを歩いて行く
「サヤが危ない……」
レンは悲鳴の聞こえたと思われる方へと走り出した
「怖い……怖いよぉ……」
サヤは木の上にいた。昔から木登りをしていた為、何とか登れたが、依然黒い物体―グラエナはサヤを睨み、吠えている
「助けてよぉ……レン……チコリータ……」
「グレイシア、水の波動!」
いきなり飛来した水塊は、グラエナの頭を捉え、グラエナの注意がそちらに向いた
「レン!」
サヤが涙ながらに叫ぶ
「絶対に下りるな、俺が何とかする……いくぞグレイシア!」
水色のポケモングレイシアは、レンの呼びかけに短く答えた
刹那、グラエナはグレイシアに噛みつこうとする
「凍える風!」
グレイシアは口から冷気を吐き、その冷気を浴びたグラエナの動きが一瞬止まる
「水の波動!」
流れるような連続攻撃に、グラエナは低く唸り、レンの足元にいるチコリータを標的にして襲いかかる
「なっ!?」
グラエナはチコリータをくわえ、人質……とでもいうようにレンとグレイシアに見せつける。俺を攻撃すればこいつも巻き添えだ……とでもいうように
「くっ……」
チコリータを盾にされ、攻撃できないレン……
「チコリータを放して!」
突如サヤが叫び、木から飛び下りグラエナからチコリータを取り返そうとする
グラエナも必死に対抗するが、サヤはグラエナの口を無理矢理開き、チコリータを解放した。自分の手が傷つくのも省みず……
「後ろだ!サヤ!」
レンの叱咤が飛ぶ、振り返る間もなく、サヤはグラエナの体当たりで弾き飛ばされ、地面に叩きつけられた
「ぅあ……」
サヤは苦しそうに声を漏らす。どうやら、そこまで酷い怪我はないようだ
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