敗者の屈辱

8/10
前へ
/177ページ
次へ
「俺はこのままアリアドスを使うぜ!アリアドス、手始めに蜘蛛の巣!」 アリアドスのお尻から放たれる糸が、ベイリーフを捉える。 「ベイリーフ!?」 「ベィ!」 蜘蛛の巣は、相手の交代を封じる力はあるものの、ダメージは与えられない。 「ベイリーフ、マジカルリーフ!」 「ベィベィ!」 ベイリーフの放った葉っぱは、分身達を避け、本体に向かっていく。 「なるほど。必中技で攻めてきたってか。だけど毒と虫タイプのアリアドスにはマジカルリーフのダメージはほとんど無いぜ?」 「あっ……」 しまった……とばかりに、口に手をあてる。タイプの事が頭から抜けていたらしい。 「いくぜアリアドス、毒づき!」 「フフォ!」 アリアドスは二本の足を構えて、ベイリーフに襲いかかる。 「あっ、ベイリーフ!リフレクター!」 咄嗟にリフレクターを張り耐え凌ごうとするが、効果抜群なのに加え、防戦一方となったベイリーフは、ただただ攻撃を受けるだけとなる。 「ベィ……ィィ」 しばらくの攻防の後、ベイリーフは倒れ、サヤの負けが決まった。 ダイキはアリアドスをボールに戻し、ただ呆然と立ちすくむサヤに近づく。 「ごめん……ちょっとやり過ぎた」 「……よ」 「は?」 「謝らなくていいよ、私がちゃんとしてないからいけなかったんだし!」 「サヤ……」 無理している……今は笑顔だが、明らかに作り笑顔だ。その事を、レンも勘づいているのだろうか? 「じゃあ私、この子達をポケセンに連れてくね!」 そう言うと、サヤは後ろ――レンやダイキの方を振り返る事無く、走り去った。 「……強がってたな」 「分かってたのか?じゃあ何で……」 レンに食ってかかろうとするダイキを、レンが手で制す。 「一人にさせてやれ……挫折を味わうのも経験だ」 「……あのさ、こんなこと……頼むのはあれだけど……」 「サヤの事を励ませ……か」 「あぁ、レンにしかできない……と思うから」 「……やれるだけの事はする。じゃあまたな」 レンはそれだけ言うと、サヤの後を追っていった。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

310人が本棚に入れています
本棚に追加