ひとつの道

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朝になっても、サヤの落胆ぶりは直らず、近寄り難い雰囲気を醸し出している。ポケモン達も、サヤの雰囲気を感じて元気がない。 「サヤ、入るぞ……」 返事が無いので、勝手に部屋に入ると、サヤが寝間着姿のまま、ベッドに座っていた。その目には覇気や生気は感じられない。 「サヤ……」 今更ながら、サヤを一人にしたことを後悔している。彼女を支えてやらなければならなかった。だが、どうすればいいのか分からず、向き合わなかった。サヤがこんなことになったのは…… 「レン……いたんだ……」 消え入りそうな声で名前を呼ばれ、レンはハッと我に返る。 「何か……用?」 「いや、ただ気分転換に出かけないか?」 「ごめん……今はそんな気分じゃ……ないから……」 「そう……だよな……ごめん……」 またやっちまった……レンは自分の不甲斐なさに奥歯を噛み締める。 「もう用がないならさ……ちょっと一人にさせてもらえないかな?」 もうレンには何もできなかった…… レンは諦めたように首を振り、部屋を後にする。 レンが出ていった後を見て、また顔をベッドに埋める。 「バカだよ……励まして欲しいのに……不安なのに……大丈夫だよって……言って欲しいのに……何で……強がったんだろ……」 そのまま、もう一度泣き出した。二人の気持ちが噛み合わずに錯誤している。 「ハァ……」 公園のベンチに座り、頭を抱え込む。 「俺は……何をしているんだ……」 頭を抱えながら、口から出るのは後悔の言葉……自分が支えなければならないのに……何もできなかった自分への苛立ち。様々な感情が入り交じり、複雑な感情が生まれていた。 「……俺が付いていっても、あいつの迷惑になるだけかもしれない」 レンはそのまま、しばらく考えていた。
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