ひとつの道

3/11
前へ
/177ページ
次へ
晴天の街を、宛もなくブラブラと歩くサヤの姿があった。 何もしたくない……でも何もしないのは辛い……そう思ったサヤは、街をブラつくことにした。 「……やっぱレンと出掛ければよかったな……」 ため息をつき、一人さ迷うサヤ。ポケモン達は連れて来なかった。勝負を挑まれないようにするためだ。 周りには、ポケモンと遊んだり、ポケモンバトルを興じる人たちがたくさんいた。そんな人たちを見る度に、サヤの気分は暗くなっていった。 「……移動しよ」 サヤは公園を出て、映画館へと向かった。 チケットを買い、映画館に入る。上映されていたのは、ありきたりなストーリーの恋愛物。別段見たいわけではなかったが、泣いても不自然に思われないという気持ちから、この映画を選んだ。 (こんな映画なのに出演者は豪華だなぁ……) そんな事を思っていると、映画は終わった。全然ストーリーを覚えていない。それほど退屈だった。 映画館を出ると、既に昼過ぎだった。 「そろそろお昼かなぁ……」 サヤは適当なファーストフード店に入り、昼食を済ませた。すると途端に、やることがなくなってしまった。 仕方無く、サヤはまた公園で時間を潰す事にした。 「……なんだろ」 公園には、何かあったのだろうか、人だかりができていた。 人だかりを掻き分けて進むと、人だかりが出来た理由が分かった。ドラマの収録だ。 「じゃあ場面22、カナミが犯人を追い込む場面。よーい、アクション!」 この時点でサヤはハッとした。これは今、大人気のドラマ『ポケモン医カナミの事件簿』シリーズの収録なのだ。ちなみにサヤはこのドラマの大ファンである。しかも、主人公カナミを演じる、女優のスギナは、どんな役も器用にこなすベテラン女優だ。前に熱血教師役を演じた時は、普段の落ち着いた雰囲気からの変貌ぶりが騒がれた。 (かっこいいなぁ……) サヤはスギナの演技に惚れ惚れしていた。 「カット!オッケーです。お疲れ様でした」 お疲れ様でしたー、とスタッフ達が復唱し、セットやカメラが片付けられる。 そろそろ行こうかなと、サヤが踵を返そうとしたときだった。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

310人が本棚に入れています
本棚に追加