旅立ちの風

8/10
前へ
/177ページ
次へ
「サヤ!」 レンがサヤに近づくよりも早く、チコリータが、心配そうな表情でサヤを見た 「なんで……チコリータ……私はあなたに酷い事をしたのに……」 「グレイシア!冷凍ビームだ」 グレイシアの放った冷気の光線は、グラエナの体を凍りつかせた 「フゥー……よくやった、戻れグレイシア」 レンはグレイシアをボールに戻し、サヤに近づく 「チコリータは、身の危険を省みずにグラエナから自分を助けてくれたお前を見て、お前をトレーナーだと認めたんだ」 そう言うと、チコリータが肯定するように短く鳴き、サヤにすり寄る 「チコリータ……」 そんなチコリータを、サヤは抱きしめる 「ごめんね……酷い事言ってごめんね……」 そう謝罪し、涙を流すサヤ、そしてそんなサヤを慰めるように頬を嘗めるチコリータには、既に立派な絆が生まれていた。 その後、グラエナを返したサヤとレンは、今日はもう遅いという理由で、明日出発する事になり、とりあえずサヤの家へと向かった サヤの母親に事情を話すと、快く聞き入れてくれ、レンも夕飯をご馳走になった。 そして、その日の夜…… 「昼間は……ぶったりしてすまなかったな」 突然の謝罪に、サヤは振り返る。相変わらずの表情だが、やはり年下の少女をぶったので、反省しているようだった 「ううん、間違ってたのは私だから。ああやって私を怒ってくれたから、チコリータとも仲良くなれたんだもん……だから気にしないで」 そんなレンに、サヤは笑顔で返す 「……私、シャワー浴びて来るから」 「あぁ……」 「……覗かないでよ?」 「分かってる。俺はもう寝るよ」 「お風呂は?」 「1日くらい入らなくてもいいだろ」 やれやれ……といった感じでサヤはレンを見ると、部屋を出て風呂場に向かった。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

310人が本棚に入れています
本棚に追加